2008.12.27 Saturday
海道 龍一朗「北條龍虎伝」
北條龍虎伝 (新潮文庫)
海道 龍一朗
伊豆〜相模を足掛かりに、関東全域を束ねた後北条氏。
この作品では、北条早雲から、氏綱を経て、氏康へと受け継がれていく「関八州制覇」の悲願への道のりが、3代目氏康の視点から描かれています。
相模から関東に進出してきた北条氏を警戒して、周囲の大名は連携し、北条包囲網を組み上げてこれに対抗しようとしました。
この多勢の連合軍に対して、北条氏康が少数で挑み、これを打ち破った「河越夜戦」は、織田信長の「桶狭間の戦い」、毛利元就の「厳島の戦い」と並び、戦国の三大奇襲作戦と言われています。
物語は、この「河越夜戦」に向けて盛り上がっていきます。
戦っては負け知らず、内政にも類まれな手腕を発揮し、名君と言われた氏康。
「人こそ、財(たから)」・・・この北条家の家訓をベースに、氏康と北条一門、主従、領民たちとの絆が丁寧に描かれており、とても読みやすい作品です。
思わず目頭が熱くなるシーン多数。
読めばきっと、あなたも、にわか北条ファンになることでしょう。
作品中、「坂東武士の聖地」として、鎌倉が頻出します。
実質的にはともかく、精神的な支柱として、鎌倉が重要な意味を持っていたことがよくわかります。